井の頭公園と又吉直樹の『火花』

井の頭公園と又吉直樹の『火花』

井の頭公園を歩いている。ここを歩くと、太宰治の『ヴィヨンの妻』を思い出していた。今日は、いま芥川賞候補になっている又吉直樹の『火花』が頭に浮かぶ。『火花』の舞台は吉祥寺で、井の頭公園がよく出てきます。又吉直樹は太宰治の熱烈なファンですから、三鷹、吉祥、井の頭公園は詳しいんでしょうね。
『火花』は、お笑い芸人のピース又吉の、面白おかしい小説ではありません。それぞれが左右に寄り過ぎた、相反する二人の漫才師が、寄りかかり合って、ぶつかりあって、漫才師のあり方を追う、純真で、極めて真面目で、優しく、そしてほろ苦さもある小説です。

師匠と尊敬していた、変態的な神谷の優しさを、井の頭公園を通して描いている。

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適当に歩いていたはずが、いつの間にか、井の頭公園に向う人達の列に並んでいた。公園に続く階段を降りて行くと、色づいた草木の間を通り抜けた風が頬を撫で、後方へと流れていった。公園は駅前よりも時間が穏やかに進んでいて、目的を持たない様々な種類の人達がいたので、神谷さんも馴染んだ。

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吉祥寺で待ち合わせて、井の頭公園まで歩いた。焼鳥の「いせや」の脇の階段をくだり、霧がかかった木々のなかを歩いて行くと、煌々と輝く自動販売機に自然と足が向いた。

改装前の焼鳥の煙がもうもうとした「いせや」が良かった。

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それから、真樹さんと何年も会うことはなかった。その後、一度だけ井の頭公園で真樹さんが少年と手を繋ぎ歩いているのを見た。僕は思わず隠れてしまった。真樹さんは少しふっくらしていたが、当時の面影を充分に残していて本当に嬉しかった。——その子供が、あの作業服の男の子供かどうかはわからない。ただ、真樹さんが笑っている姿を一目見ることが出来て、僕はとても幸福な気持ちになった。誰がなんと言おうと僕は真樹さんを肯定する。

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