『作家の誕生』:猪瀬直樹
『作家の誕生』は猪瀬直樹の直接サイトから数冊購入しました。毛筆で猪瀬直樹のサインがしてあります。まだ猪瀬直樹が東京都知事になる前です。その頃はTwitterで自書を宣伝紹介していました。私は猪瀬直樹がドキュメンタリー作家に戻ってくれたことを喜んでいます。
夏目漱石を読み直しています。高校生のときに数冊読んで以来ですから読み直しとは言えませんけど。正岡子規、高浜虚子そして寺田寅彦を読もうと思うと、夏目漱石をさけては通れません。図書館で夏目漱石全集を読み始めて、なんでもっと早く読み返さなかったか後悔しています。
そこで明治の時代からの小説を読むとき、猪瀬直樹の『作家の誕生』を読んでおくと面白さが倍増します。多くの作家が登場します。作家同士の縦横の関係を知れば、その時代の小説をクロニクルな読み方ができます。
例えば、寺田寅彦の『夏目先生の追憶』を読むと『三四郎』の野々宮は自分がモデルとあると書いています。では、三四郎が思いを寄せた女性、ヒロイン美禰子のモデル誰だろう? 『作家の誕生』で猪木直樹が明かしてくれました。漱石の弟子だった森田草平と女子大出で高級官僚の娘の明子(平塚らいてう)の心中未遂事件、その明子を夏目漱石は「無意識の偽善者」と言い、ヒロイン美禰子の誕生になったそうです。
そんな文豪、作家たちの機転と、したたかさ、文壇への野望、売るための苦悩と策略、スキャンダラスな逸話などが満載で、開花する時代の奔放な一面も見えます。川端康成と大宅壮一の関係、中央公論、文芸春秋、新潮社の創設と作家達との関係、芥川龍之介に憧れていた太宰治、太宰治を「嫌いだと」と言っても大宰の作品と自殺を意識していた三島由紀夫、そして作品を残して自殺した三人。『作家の誕生』を読むと、作品の背景が少し見えてきます。
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