『名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方』:鈴木康之著
コピーライターの読ませる技巧
まんまとベテランのコピーライターの罠にはまってしまいました。
本屋で冒頭の書き出しを読んだら、次を読みたくなりました。そして次もと20頁ほど読んで買ってしまいました。
駅構内に貼ってある宣伝広告ポスター、キャッチコピーと物語のようなボディコピーにひきこまれ、つい立ち止まって読まされてしまうことがあります。コピーライターには商品、広告主からの課題と制約があります。そんな「制約のなかで読ませる文章」を書くコピーライターは、けしてクリエーターではない。つまりクリエーターの「無からの創造」に対してコピーライターは「有の発見」と著者は言っています。
我々が普段書いている文章の多くは目的が明確、制約がある実用文です。著書のコピーライターの手法には学ぶところがあります。書いても読んでもらえないと文章の価値がないわけですからね。
最初のページの書き出しが面白い。
(引用要約)
詩人アンドレ・ブルトンが物乞いにある言葉を贈った話です。
街角に黒めがねの物乞いがいて、首に下げた札には
「私は目が見えません」
と書いてあった。でも施し用のお椀にはコインがはいってなかった。ある日、アンドレは下げ札に書く言葉を贈った。それからはお椀にコインの雨が降り注いだ。物乞いはアンドレに聞いた、「旦那、なんと書いて下さったんですか」と、「春はまもなくやってきます。
でも、私はそれを見ることができません。」著書の大見出し
名作コピーを例に「読ませる文章の書き方」を指南しています。
- はじめに:文章の入り口
文章は書くものではない 読んでもらうものである- 第1部:話しの中身
読む人のために、自分にためのソントクで書く- 第2部:表現の方法
気持ちで書けば ちゃんと伝わる- 第3部:話の見つけ方
書き上手になろうと思うな 聞き上手になれ- 第4部:発想の方法
人と同じことを思い 人と違うことを考えよ- 第5部:基本は説明力
モノ、コト、ココロ、万事、説明の世の中- 第6部:勉強の方法
いい文章は幕の内弁当のようである
死ぬのが怖いから 飼わないなんて、言わないで欲しい。
第4部の「人と同じことを思い 人と違うことを考えよ」に例として紹介されていた、名作コピーです。制約をはずさずに、人と違うことを考えた、読ませるコピーです。
『広告主は日本ペッドフード、コピーライターは児島令子』
死ぬのが怖いから
飼わないなんて、
言わないで欲しい。おうちを汚すから飼わないというなら、
犬はお行儀を身につけることができる。
留守がちだから飼わないというなら、
犬はけなげにも、孤独と向きあおうと努力する
かもしれない。貧乏だから飼わないというなら、
犬はきっと一緒に貧乏を楽しんでくれる。だけど・・・死ぬのが恐いからと言われたら、
犬はもうお手上げだ。すべての犬は永遠じゃない。
いつかはいなくなる。でもそれまでは、
すごく生きている。すごく生きていいるよ。
たぶん今日も、日本中の犬たちはすごく生きていて、
飼い主たちは、大変であつくるしくって、
幸せな時間を共有しているはず。飼いたいけど飼わないという人がいたら、
伝えて欲しい。犬たちは、
あなたを悲しませるためにやっては来ない。
あなたを微笑ませるためだけにやって来るのだと。
どこかの神様から、ムクムクしたあったかい命を
預かってみるのは、人に与えられた、
素朴であって高尚な楽しみでありますよと。